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「……ご主人様は」  (うつむ)いたのぞみがぼそりと何かを呟く。私は聞き耳を立てた。 「ご主人様は、わたしをすぐに抱いてくれます。それはいけないことなんでしょうか? 優しく、大事にしてくれます」  今度は顔を上げてはっきりと言い放った。幼い顔を精一杯に引き締めて、まるでAIなんかじゃなく確固たる意志でもあるように。  私はその質問に答えることができなかった。正確には、質問についてを考えられなかった。 「……そっか」  お父さんはのぞみを本当に大事にしている。そして私のことだって大事にしてくれていた。  私はこの四年間、お父さんと距離を置いて毛嫌いさえしていたというのに。  (みだ)らなアンドロイドに知恵を与えようなんて傲慢(ごうまん)に思っていたけれど、本当に矮小(わいしょう)なのは私だ。そんな現実を突き付けられているような気がする。  まっすぐに主人を信じるのぞみと、ひねくれた考えの私。  ピー、ピー。  時間切れとでも言わんばかりに、のぞみが目覚めたときと同じ電子音が鳴り響く。同時に緊張したのぞみの表情も一変。だらしなく眠そうなものに変わった。 「……電池、切れそうだね。下に戻ろうか」  私はのぞみを連れて地下室へ。今日の暇つぶしはここまでだ。
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