【第一の不思議/前編】

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【第一の不思議/前編】

〔体育館のバスケ部員〕 「ちょっと、ナナヤ!いきなり走り出さないでよ。大体、学校の不思議って…」 「この前、見つけたんだよ」 「この学校にそんな話あった?それに、不思議ってどんな不思議よ?」 「あるんだな、それが!七不思議だよ、七不思議」 「な、七不思議!?それって、全部知るとヤバいって言う…、あれ?」 「そっ、それだよ。そしてその七不思議の一つめがここ、体育館だ」 ガラッ  掃除当番を終えたナナヤ達が最初にやって来たのは、体育館だった。  館内に誰もいないことを確認し、ナナヤ達は中へと入って行く。  広い館内を見回し、ナナミはナナヤへ顔を向けると、眉間に皺を寄せながら先程話していた七不思議について訊ねた。 「体育館の七不思議…?」 「バスケ部員だよな」 「「え?」」 「さっすが、キミヤ!!オレもこの前見つけたばかりなんだけど、なんでも放課後バスケでスリーポイント決めると、昔のバスケ部員が出てきて決めた奴をどこかへ連れ去るんだと」 「昔の、バスケ部員って…」 「誰か来るの?」 「さあ?やってみりゃ分かるだろ」 「ちょっ…、連れ去られるって…」 「いや…」 「単なる噂だろ」  言いながら、ナナヤとキミヤはバスケットボールを取りに体育館内の倉庫へ向かい、中からボールを取ってくるとナナミ達へと声を掛けてゴールを狙い始めた。  声を掛けられたナナミとフミノは顔を見合わせていたが、一つため息を吐くと、二人に混ざってボールをゴールへ向かって投げ始め、しばらくの間それを続けていた。 「なかなか入らね~な…」 「あんたが下手なだけでしょ?」 「そう言うお前だって、入ってねえじゃねえか!」 「わ、私は…」 「はは~ん、お前怖いんだな?」 「な、何よ!悪い?」 「や~い、ビビり!!」 「うっさいわね!!」  言い合いを始めたナナヤとナナミ。 そんな二人を見つめていたキミヤとフミノだったが、二人の言い合いに割って入る余地もなかった為、一度シュート打ちを止める事に。  しばらくそうしていると、言い合いの流れからナナミの怒りが頂点に達し、ボールを持つとそのままナナヤへ向かって投げ付けた。 ボールは逃げようと背中を向けたナナヤの後頭部に直撃し、大きくバウンドしてゴールへと吸い込まれていった。  一部始終を見ていたキミヤとフミノは目を見開き、意図せずシュートを決めてしまったナナミは瞬時に青ざめた。  ボールがゴールを抜け、床へ数回バウンドして動きを止めると、突然ゴール下に白い人影が現れてナナミへと顔を向けてきた。  ビクリと身体を震わせたナナミ。 しかしその時、倒れていたナナヤがむくりと立ち上がり、ナナミと白い人影の前に立ちはだかった。 「本当に、現れた…」 「七不思議の通りだとすると、ナナミちゃんは…」 「やい幽霊、ナナミは連れてかせねえぞ!!」 「ナナヤ…え、キャアアアアッ!!?」 「ナナミ!!」  ナナミの叫び声に振り返ったナナヤの目に飛び込んできたのは、床から伸びてきた白い手がナナミの足首を掴み床へと開いた穴に引き摺り込んでいるところだった。  驚きながらももう一度、白い人影を確認すると先程まで居た所にはすでに姿は無く、舌打ちしたナナヤは無我夢中でナナミの元へと駆け出した。 しかし、駆け出した時にはすでにナナミは手以外が床下へと沈んでしまっていて、ナナヤが辿り着くと同時に手までもが沈み込み、穴も塞がってしまったのだった。  膝をつき床を力強く殴り付けたナナヤに、それまで動けずにいたキミヤとフミノが駆け寄り心配そうに声を掛けた。 けれど、ナナヤは何度も床を殴り続け、そのままうずくまってしまった。 「ナナヤ君…」 「………ナナヤ、落ち込んでても仕方ないだろ。次、行くぞ」 「え…」 「行くって、ナナミちゃんはどうするの?」 「いなくなってしまったものを待ってたって、帰ってくるとは限らない。…探し回っている内に見つかるかもしれないだろ」 「「………」」 「俺は行く」  スタスタと扉へ向かって歩いて行くキミヤを見つめていたナナヤとフミノ。 しかし、顔を見合わせると、小走りでキミヤの後を追いかけたのだった。 end
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