【第二の不思議/前編】

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【第二の不思議/前編】

〔プールに現れる女の子〕 「ナナミちゃん、見つかるかな…?」 「見つけるさ、絶対にな…」  ナナミが見つかるか心配するフミノに、ナナヤはじっと前を見つめながら答えた。  キミヤと共に体育館を後にしたナナヤとフミノは、二つ目の七不思議を調べに次の場所へと向かっていた。 その間、先を歩くキミヤへ視線を向けたナナヤはふと、気になったことを訊ねた。 「なあキミヤ、そう言えばお前はこの学校の七つの不思議、最初から知ってたのか?さっきのバスケ部員のことも知ってたみたいだし…」 「ああ…。大体は、な…」 「え…。「知ってたのか?」ってナナヤ君とキミヤ君、二人で調べたんじゃないの?」 「いや、オレは一人で調べたんだ。なんだ、知ってたのか~…。まあでも、キミヤなら知ってて当たり前か」 「どうして…?」 「キミヤはもともとオカルト好きなんだ。こいつの部屋、それ関係の本とかいっぱいあるんだぜ!!」 「そう、なんだ…」 「しっかし、知ってたなら言えばよかったじゃねえか」 「悪い…。次はここだな」  キミヤが立ち止まり呟いた声に、話し掛けていたナナヤと後に続いていたフミノが顔を向けると、目にとまったのは『プール』と書かれたプレートだった。 それにナナヤはぱっと表情を明るくし、フミノは首を傾げる。  先頭をきっていたキミヤは、ためらうことなく戸に手を掛けると、グッと引いた。 すると戸はあっさりと開き、ナナヤとフミノは鍵が掛かっていないことを不思議に思った。  始めは二人と同じく驚いていたキミヤだったが、意を決すると、臆することなく中へと入っていった。  慌ててキミヤを追い掛けるナナヤと、不安気な表情を浮かべながらもそんな二人の後を付いていくフミノ。 しかし、二人はさっさと行ってしまい、ようやくフミノが追いつくと、そこにはなみなみと水の張られたプールがあった。  プールの水は、最後に自分達のクラスが使用し、足元まで抜いていた筈なのにと三人は思わず立ち尽くしていた。 「プールに水が…」 「6時間目にオレらが使った後、抜いて掃除したよな…」 「…また、入れ直したんだろ」 「そ、そうだよね…」 「それより、ここの七不思議は…」 「確か、飛び込み台に座ってプールに足を入れていると、女の子がプールの中から引っ張って来て溺れさせられる…だったな」 「やるぞ」 「おう!!」 「え…」  キミヤの言葉に従い、ナナヤはすぐさま飛び込み台へと近付き腰を掛けた。 同じく、キミヤもナナヤの隣の飛び込み台に腰を下ろしたが、フミノは噂の内容を恐ろしく感じ、飛び込み台へ近付くことをためらった。 「おい、お前も早く座れよ!」 「っ…」 「ナナヤ、無理強いするな。別に、俺たちだけでも問題ないだろ」 「ん~…、まあ、ナナミのこともあるしな…」 「あ…」 「よし。だったらお前はそこにいて、もし俺たちに何かあったら先生呼びにいってくれよな!」 「さ、始めるぞ」 「おう!」 パシャ (二人とも…)  ナナヤとキミヤはためらわず、プールの中へと足を差し込んだ。 二人の様子を背後から見つめていたフミノは、申し訳なく思いながらも、二人の背中を見つめながら何事も起こらないようにと祈った。  数分後、プールに足を入れた二人には何も変わったことは起きず、実験中のナナヤはフミノへ顔を向けると安心させるように笑いながら話し掛けた。 「今回は大丈夫みたいだぜ!!」 「ここの不思議は、ただの噂だったみたいだな…」 「そうだな。何かあれば、ナナミのことも分かると思ったんだけどな…」 「…ナナミ、ちゃんの…?」 「ん?まあ一応、心配だしな…」 「そっか…、そうだよね…」 (ナナヤ君はナナミちゃんのことをちゃんと考えてたんだ…。それなのに、わたし…)  ナナヤの言葉に、(自分のことしか考えていなかった…)と胸元を握り締めたフミノは俯いた。  フミノが元気を無くしたことに気付いたナナヤはプールから離れ、理由を訊ねようとフミノへ近付いたその時、突然キミヤが声を発した。 「どうし…」 「何かいる!」 「「え?」」  膝を返したナナヤとそれに続いたフミノは、キミヤの両隣からプールを覗き込んだ。 しかし、二人には何も見えず、ナナヤはキミヤに声を掛けると何を見たのか訊ね、話しながら二人はプールに背を向けた。  何も無かったことにほっとしながらも、何を見たのか気になったフミノは目を凝らしプールを覗き込んでみた。  その時、プールの中で何かがゆらめき、そのなかに一瞬、顔が見えた気がしたフミノ。 驚いて声をあげた瞬間、プールの中から白い手が伸びてきて、フミノの手首を掴んだ。 「キャア!!」 「どうした!?」 「な、なんだよ、それ…」 「いや…、離れな…キャアアアア!!」 ズルッ ドボンッ 「「フミノ!!」くそっ!」 バシャン  二人が見ている目の前で、何者かに手を引っ張られたフミノはプールへ引きずり込まれてしまった。  慌ててプールへ飛び込んだナナヤとプールのふちから様子を見ていたキミヤの目に映ったのは、背中から女の子に抱き着かれ、もがきながらそれを引き剥がそうとしているフミノの姿だった。  二人は目を見開いていたが、飛び込んだナナヤはフミノの息がもたないことに気付いて急いで近付き、取りあえず引き上げようとフミノの手首を掴んだ。  意識が遠退き掛けていたフミノは、ナナヤに手を掴まれたことにほっとして最後の力を振り絞り、後に続くように水上へ向かって足を動かした。  ナナヤの行為とフミノの行動に女の子は一瞬驚いた表情を見せたが、唇を噛み締めると、フミノの身体を更に水中へと引き込み始めた。 グイッ 『お姉ちゃん…、一緒にいてよ…』 (!あ…、いや…) (な!…くそっ、もう少しなのに息が…) 「がぼっ…」 (ナナヤ君…) バシッ 「!?…がっ」  あと少しというところでナナヤの息はもたなくなり、そのことに気付いたフミノはナナヤの手を振り払った。 そのままフミノは引き込まれて姿を消し、息が限界に達しながらもナナヤはフミノの姿を探した。  一度水面へ出て息を吸いなおしたナナヤは再び水中へ戻ったが、やはりフミノの姿はどこにも無く、水中へ上がると悔しそうに拳を握り締めそのまま俯いていた。 「…また、助けられなかった…」 「………」 バシャバシャ ザバッ 「…あいつ、オレの手を振り払った…」 「…そうか」 「なんで…」 「………次に行くしかないな…」 「次たって…」 「この七不思議の三つめだ。お前も、内容を調べたなら意味は分かるだろ」 「………ああ、そうだったな」  しばらくの間プールを見つめていたキミヤと、悔しがりながら同じようにプールを見ていたナナヤ。  少し考えたあと、キミヤは次の七不思議へ向かおうと促した。 すぐには理由が分からなかったナナヤだったが内容を思い出し、納得するとすぐに三つめの七不思議へと向かったのだった。 end
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