冬が近づく日

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冬が近づく日

「何で今日はこんなに寒いのさ」  ぴょこんぴょこんとカエルのこどもが一匹。暖かい日差しを探して草むらをかき分け歩いていた。時折冷たく強い風が草をなぎ倒すと、カエルのこどもは飛ばされないように身をかがめる。  するとザザザッザザザッと何かが近づいてくる音が聞こえてきた。カエルはピクッと足を止め、身を低くし音のする方向を探す。耳を澄ましそっと振り返ると、左後方の草の先っぽが風に背いて動いているのが目に入った。そしてその姿はお互いを認識した。 「おぉ。こんなところに食い物があるとは」 細っこいミドリニシキヘビたった。  カエルはヘビの顔をじっと見る。しかしそれは敵意ではなかった。 「何だ……ヘビさんか。何が来たかと思っちゃった」 「何だお前。カエルのこどもはヘビが怖くないのか」 「ヘビさんは優しいって聞くよ。寒いときはその体で首元を巻いて暖めてくれるって」 「それは締め付けて息の根を止めてるだけだ。お前なんかはあっという間に丸呑みだわ」 「もしかして、ぼくを丸呑みしたいの?」 「あぁそうだな。冬に入るからそろそろ潜らなきゃならないし、腹ごしらえは必要だな」 そういって細い舌をヒョロヒョロとさせた。 カエルは逃げられないと観念したのか、その場を動かなかった。 「どうした。逃げないのか」 「ぼく、この風が寒くてもう動けないよ。暖かい場所を探して歩いていたんだけど、ここでヘビさんに会ったのなら、もう選択肢はないよ」  ヘビは黙ってカエルを見つめていた。ひと飲みにするなら今すぐにでも出来た。しかしこのカエルの子に妙な親近感を覚えたヘビは、この場を見逃すことにした。
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