26人の神候補

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26人の神候補

「ちょ、待って。何だよその無茶振り。普通の人間が出来る訳無いじゃないか!」  俺は目の前のおっさんに突っかかる。  幾ら何でも無謀な賭けになるのだから仕方がない。 「お前は選んだではないか。神になれるチャンスだ。苦難な道かもしれんが、初めから出来ないと決めつけるのは如何かな?」 「何の力も持っていないのに、如何やって神になれと?」 「その点については、ギフトと補填を用意している。それにお前1人だけに神を目指させている訳でもない」 「何だって?」 「お前が最後の神候補だ。他の者も神候補として既に移送している。全員で26名、記号としてアルファベット順にしてある。スマホを見てみるが良い」  そう言われたので、俺はポケットのスマホを取り出して見る。  すると、画面にはチャットアプリだけが存在していた。  他のアプリや機能は全て無くなっている。  通話は不能なのに、電波だけが有る。何だこれ? 「お前達はそのチャットを使って情報交換が可能になっている。他の機能に関しては、神格が上がった際に追加される様にしてある。消滅までの猶予が短いので、特別に不死の肉体にした。復活する際、1日を無駄に過ごさなけれなばならないが、次の日には五体満足で活動出来る」 「ギフトって、もしかしてソレなのか?」 「違う。それは必要最低限の補填だ。ギフトの使い方も満足に出来ない内に無駄死にされても困るからな。勿論死の脅威に晒される事無く神格を上げる事は可能ではあるが、難易度は格段に高くなる。経験値が稼ぎ辛いので、レベルアップもし難い」 「レベルアップ?」 「RPGはやった事があるだろう? モンスターを倒せば経験値が入り、レベルアップが出来る。神格もその経験値を基にしているから、戦い続ければ神格を上げ易くなっている」 「なら、その世界の冒険者が何れは神に至れば良かったんじゃないのかよ」 「あの世界の者達には神格が無い。あくまでも神格を持つのはお前達だけだ」 「貴方達は私が神の依り代として地球に誕生させました。ですので、この様な形で貴方達に神へと至る道に進んで貰わなくてはならなくなったのです」  おっさんの後ろに控えていた美女が前に進み出て来た。  今なんて言った? 「まさか、あんたは地球の神様なのか?」 「その通りです。そしてこちらに在わす方は、創造神であらせられます」 「全然偉そうに見えなかったぞ」 「当たり前だ、今は仮の姿でお前の前に居るのだからな。本来の姿で現れたら今のお前の神格では私の神格に耐えきれず精神崩壊してしまうからな」 「怖えよ。まあ、今更あんたを敬う気にはなれんがな。所で俺のギフトは結局、何になるんだよ?」 「それは今から私が授けます。貴方が神に至る道、その助けとならん事を」  美女が俺に近づいて何をするかと思えば、両手で顔を挟み少し屈ませてからおでこにキスをして来た。  どうせなら頬か口にしてくれよ。 「スマホの使い方は今まで通り、アプリを起動して利用するだけだ。お前の記号はZ、道半ばで挫けぬ事を願う。ではさらばだ」  美女が離れたと思えば、おっさんが前に進み出て手をかざす。  すると、俺の足元に魔法陣の様なものが浮かび上がり、俺は何処かへと飛ばされてしまうのだった。  くそぅ、こうなりゃヤケクソ。  神でも何でもなってやらぁ!
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