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それらのことを思い出し、先程の死後硬直はヘンティルが無念を晴らしてくれと言っているように思えた。
「私がどうにかしてみせる……」
ネフリーは医務室を出ると、王の寝室へ向かった。いくらルグレが王の実子でも、殺人をもみ消すようなことはしないと信じてのことだ。
寝室の前では、ふたりの警備兵が立っている。
「どうかなさいましたか? ネフリー王女」
警備兵は不思議そうに首を傾げる。
「ヘンティル王子が暗殺されました。そのことについて、王に話さねばならないことがあるのです」
警備兵達は顔を見合わせると、扉から1歩離れた。
「ありがとう」
ネフリーはふたりに礼を言うと、寝室に足を踏み入れる。広々とした部屋には月明かりが差し込み、気品溢れる調度品を優しく照らしている。
「 国王陛下、お目覚めになってください。どうしてもお耳に入れたいことがあるのです」
「こんな夜中に何の用だ……」
国王は目を擦りながら、鬱陶しそうに起き上がる。
「私の婚約者でもあり、時期王でもあるヘンティルが、ルグレ王子に暗殺されたのです」
「暗殺? ヘンティルは落馬したのであろう? それなら事故だ。今宵は戯言も大目に見てやる、はやく自分の寝室に戻るがよい」
国王は煩わしいと言わんばかりに、しっしっと手で追い払う仕草をすると布団を被ろうとする。
「戯言などではありません! 私はこの目で見たのです! ルグレ王子が吹き矢を持って、こちらの様子を見ていたのを」
「えぇい、うるさい! せっかく大目に見てやると言ったのに、それをわざわざ無下にするとは、愚かな女だ! お前達、この女を地下牢に入れておけ!」
国王が扉に向かって叫ぶと、見張りをしていた兵士達が入ってきた。
「この女は我が息子ルグレを犯罪者呼ばわりした! さっさとここからつまみだせ! 明日にでも処刑してやろう」
怒り狂った王が怒りを滲ませた深紅の瞳でネフリーを睨みつけると、兵士達はネフリーを捕らえた。
「離しなさい! ルグレ王子が王位欲しさに殺したに決まってます! 自分の息子だからって、殺人を見て見ぬふりですか、陛下!」
ネフリーは暴れながら国王に訴えかけたが、か弱い王女が兵士にかなうわけもなく、地下牢に閉じ込められてしまった。
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