崩壊と決意

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崩壊と決意

第4国の中で1番栄えた水の国、ネロ。首都のヴァダーは、白レンガの建築物と水路が、美しい街並みを描いている。 リゾート地でもあるヴァダーの最奥には、純白の城がある。水路と城壁に囲まれたこの城をひと目見ようと、ヴァダーに訪れる者が多くいる。 そんな美しい城の中庭では、若い男女がお茶を楽しんでいる。 「今日は天気もいいし、仕事もひと段落したから久しぶりに乗馬をしようと思うんだ。ネフリーもどうだい?」 ウェーブのかかったライトブラウンの髪が良く似合う好青年は、女性に優しい目を向ける。彼の名はヘンティル。ネロの王子だ。 「ずっと読みたかった本が、今朝ようやく届いたの。せっかくだけど、また今度」 翡翠色の瞳にブロンドの髪が美しい女性、ネフリーは申し訳なさそうに眉尻を下げた。彼女はヘンティルの婚約者だ。親が決めた婚約だが、ふたりはこうして愛し合っている。 「そっか、残念だけど仕方ないね。それじゃあ、ゆっくり読書を楽しんで」 「えぇ、ヘンティルも」 ヘンティルはにこやかに言うと。席を立った。ネフリーは彼を見送ると、使用人を見上げた。 「本を取ってくるから、紅茶を淹れ直してもらっていいかしら?」 「かしこまりました」 使用人が恭しく頭を下げると、ネフリーは自室へ本を取りに行く。 「どんなことが書いてあるのかしら?」 ネフリーは目をキラキラさせながら、本の表紙に触れる。その本には、隣国である風の国、アネモスの剣術について書かれている。アネモスは騎士の国といわれるほど、戦闘力が高い騎士が多く存在する。今年で18になるネフリーは、せめて自分の身を守れるようにと、剣術を身につけようと考えた。 本を抱えて中庭へ戻る最中、窓から外を見るとヘンティルが白馬に乗って駆け回っているのが見えた。ネフリーは足を止めてその様子を見る。 「将来ヘンティルの役に立つためにも、頑張らないとね」 ネフリーは小声で言うと、再び歩を進める。
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