目覚めた子犬

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目覚めた子犬

 ーーめざめたら、ボクはしらない公園にいた。  手狭な公園で一匹の子犬が首を傾げている。  春の爽やかな陽気で木陰から、さわさわと微風が吹き、柔らかな光が注いでいる。  めざめた子犬は自分のことをゆっくりと思い出していく。  ーーボクはケミー。赤毛の犬。  近くに人の姿が見える。  近づいて、ここはどこなのか聞いてみよう。  おばあさんが木陰のベンチで休んでいる。  「ねぇ、ここはどこ?」  ワンワンと吠えても、こっちを見ない。なんでだろう。  おばあさんはゆっくりと立ち上がると、公園の出口に向かう。  ねぇ、おばあさん!気づいてよ!  ケミーはおばあさんに近づくも、足元をすり抜けてしまった。  「え?なんで?」  内なる疑問がワンと声としてもれる。  ケミーはもう一度、おばあさんに気づいて欲しくて、体当たりをしてみた。  だけど、スーッと通り過ぎてしまう。  (ボクは死んでしまったんだ……!)  おばあさんは何事もなかったように、公園を立ち去ってしまった。
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