お千代の過去

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お千代の過去

 水飲み百姓の娘として生まれたお千代、 その生涯は予想された。  死に物狂いで作物を作りその殆どを年貢で取られ、 村の庄屋にも取られ、生かさず殺さずの生活だった。  金が無くなると庄屋に頼んで貸してもらう。 法外な利息が付いた。  借金の借り入れが重なり返せなくなると家族の誰かを 鉱山で働かせた。鉱山に連れて行かれた者は昼夜非情な労働と 劣悪な環境で数年で死んでいった。  お千代の父親も鉱山で無残な死を遂げた。  しかし借金はまだ残っていた。  今度は庄屋がお千代を女郎屋に売り飛ばす事になったのだ。 「で、あたいは逃げたけど、近所のお静ちゃんは 重蔵に捕まえられて女郎屋に売り飛ばされた・・」  遊郭、女郎屋、吉原が有名だがその殆どの女は 借金のかたに連れてこられたのである。  きらびやかなイメージもあるが売られた女の寿命は短い。 昔は性病、結核が蔓延していた。病気に罹って金を稼げず 廃人になった女達は全て近くの寺に隔離され 生涯を終える。  売られて数年単位だろう。
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