補佐官(仮)

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補佐官(仮)

筑紫田 潤平は最近、酷く疲れている。いや、疲れ続けている。休むことが出来なくなった。“あれ„が始まってから、寝ると“あれ„の先取りをした夢を見る。夢で見た事柄が次の日に確実に起こる。最初は“あれ„が起こったショックだろうと思った。だが日を追うごとに、夢はより正確により鮮明になった。今、筑紫田の目の前では巨大怪獣と総理大臣が闘っている。周りの人々は突如起きた“大„乱闘に戸惑い、避難している。だが筑紫田は知っている。ここまで被害が来ないこと、後20分程度で終わることを。この夢がなければ、少しはこれも楽しめたのだろうか。2回目だと酷くつまらない。ドンッ 逃げているサラリーマンの肩がぶつかった。名付けるならば“予知夢„は自分のことは分からない。何が起こるかしか分からない。不便だ。そしてつまらない。休めない。生活が荒む。先週、彼女が出ていった。空から大きなレゴブロックが落ちてきている中。今、彼女が生きているかどうかも分からない。まあ、それもどうでもいい。周りからは人々の悲鳴、怪獣の叫び声、総理の悲鳴が聞こえる。こんな騒がしいのなら、今日は仕事を休めば良かった。はあ。目が痛い。予知夢が始まってから、目の痛みが常時続くようになった。昼間は目を瞑っても夢は見えない。快適だ。
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