葡萄の花言葉(♂→♂)

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葡萄の花言葉(♂→♂)

葡萄の花言葉【酔いと狂気】 (やっと、お前を見つけた…。俺の愛した人…。) 「先輩、前世って信じますか?」 「前世?」 「はい。」 「う~ん…、どうかな…。」  仕事も終わり、帰ってゆっくり酒でも飲もうかと考えていた男は、押しの強い後輩に誘われて断りきれず、居酒屋へとやって来た。 後輩と二人で酒を飲むのは初めてで、男は何を話していいやら戸惑っていたが、後輩から色々と話を振られている内に、不思議と戸惑いは消えていった。  会社の中でもとても目立つタイプで、年上、年下、男女問わず人気が有り、いつも人の輪の中心に居る人物。 話しをしながら、そんな後輩の姿を思い出した男は、今日は何故、あまり話した事の無い自分を誘ったのかと訊ねてみた。  この疑問への答えが、その言葉だったのだ。 「俺、昔からよく同じ夢を見るんです。」 「夢?」 「はい。いつも同じ家が出て来て、俺はその家の住人なんです。俺が小学生の頃はその人独りぼっちで…、俺、起きるといつも泣いてました。」 「へ~…。」 「だけど、俺が中学に入ってからはその人、一人じゃ無くなってて、女性と一緒に暮らしてましたね。とても幸せそうで…、夢の中の人物を正直羨ましく思っていました。」 「………。」  酒を一口飲んで、どこか寂しそうに話す後輩に、男は思わず黙り込んだ。 しかし、後輩はすぐにいつもよく見掛ける笑顔を浮かべると、夢の続きを話し始めた。 「でも…、俺が高校を卒業する頃に、その女性は居なくなってしまったんですよ。…どうやら、俺が殺してしまったみたいで。」 「…え。」 「あ、俺と言っても、夢の中の人物ですよ?」 困った様に笑いながら話す後輩に、男は内心の動揺を隠しつつも愛想笑いを浮かべた。  夢の中の女性を殺したのは自分だと言った瞬間、後輩の表情を男は何故か、遠い昔に見た事がある様な錯覚に陥ったのだ。 「先輩…。」 「な、何だ?」 「その人物は、前世の俺なんです…。だから、女性は俺が殺したと言うのは、強ち間違いではないんですよ。」 「え?」 「ほら…、ここに痣があるでしょ?これ、その女性を殺した時に付けられた物なんです。」  話しながら軽く腕を捲り、自身の腕に付いた痣を見せた後輩に恐怖を感じた男は、顔を逸らした。 そんな男の態度にクスリと笑った後輩は立ち上がると男の隣へ移動し、スッと男へ手を伸ばすと首筋に触れ、きっちりと閉じられている襟元へ指を滑り込ませた。  嬉しそうに笑って、滑り込ませた指に少し力を入れて隙間を作り、中へと視線を移す後輩。 そこには、うっすらとだが痣が有り、それを見た後輩はどこか懐かしそうな表情を見せた。 「なっ!?」 「…やっぱり、先輩ですね。」 「何の、事だ…?」 「この会社に入社してから、ほぼ毎日の様に見ていた夢を見なくなったんです。だから、もしかしたらと思って探したんですよ。そうしたらこの前、先輩が残業して仮眠とっている時、偶然首筋の痣が見えたので、先輩だなって。」 「…どうして、俺だと思う?」 「こんな偶然、そうそう無いじゃないですか。女性は俺が首を絞めて殺したんです。俺は、あなたに‘また’会えて、凄く嬉しいです。」 “ドサッ” 「っ、何言って…?!」  突然押し倒された男は、真上から自分を見下ろす後輩の瞳に狂気を感じ、目を見開いた。  両手を男の首へと伸ばし、笑みを浮かべながら、小さな声で後輩は呟く。 「これからはずっと一緒ですよ、先輩…。」 (俺はお前を漸く見つけた…。誰にも渡さない。お前を愛し続けるのは、この俺だけだ…。) 終わり
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