3人が本棚に入れています
本棚に追加
蜜柑の花言葉(♀×♀)
蜜柑の花言葉【花嫁の喜び】
(幸せそう…。)
休日、暇を持て余して街中を一人で散歩していた私は、一際賑やかな声がする方へ目を向けた。
そこには小さな教会があって、丁度、教会の中からウェディングドレス姿の花嫁さんとタキシード姿の花婿さんが出て来たところだった。
二人は仲睦まじそうに腕を組み、周りの人達から祝福されて、花嫁さんの笑顔は本当に幸せそうに見えた。
(…私には、無理だな…。)
「あれ、こんな所で何してるの?」
「え…。」
声を掛けられて振り返ると、そこに居たのは私の幼なじみであり、想い人の彼女だった。
「久し振りだね~!!何、私に会いに来たの~?」
「別にそんなつもりは…。」
「冗談よ!でも、こんな所で会えるなんてね~。何見てたの?」
「あ、何か賑やかな声が聞こえたから、何かなと思って…。」
「あぁ、そこ教会あるからね。よく結婚式挙げてるの見掛けるよ。」
「そうなんだ…。」
茶化す様に話す彼女に戸惑いながらも、久し振りに会えた事は本当に嬉しかった。
何となく教会から彼女へ目を移すと、教会を見つめる彼女の表情はどこかうっとりとしていて、その表情に胸が苦しくなった。
「私達もそろそろ良い年だものね~…。あなたは相手とか居るの?」
「…居ないよ。」
「そっか…、私も一緒。………好きな人とかは、居るの…?」
「………………うん。」
「………そうなんだ…。」
顔は合わせられなかった。
だけど、彼女が元気を無くした事にはすぐに気付いた。
すぐに分かった、いつもと違う声の質。
どうしたのかが気になって、もう一度彼女の顔を見つめ様とした。
瞬間、彼女と目が合った。
驚いて逸らそうとした、けれどそれは無理だった。
辛そうな表情の彼女に、思わず手を伸ばす。
「どうしたの?」
「え…あ、うん…。何か驚いちゃって…。」
「驚いた…?」
「あなたに好きな人がいた、なん…てね…。ふっ…。」
彼女の目から零れ落ちた雫に、理由が分かった気がして、私は彼女を抱き締めていた。
「…私が好きなのは…、あなただよ…。ずっと、前から…」
私は自分の思いをぶつけた。
彼女は驚いた様に身体をビクつかせたけれど、気持ちは私が思っていたのと同じものだった…。
数年後、私達は二人だけであの教会に居た。
とても静かな教会の中で、ウエディングドレスでは無いけれど真っ白な衣装を身に付けた彼女と、タキシードでは無いけれど黒い衣装を身に付けた私。
祭壇の前でとても優しく微笑みながら私を見つめる彼女が告げた言葉に、私も微笑みながら返した。
「私と、永遠の愛を誓ってくれますか?」
「はい。誓います…」
その時の彼女の笑顔は、あの時に見た花嫁さんと同じ、とても幸せそうなものだった。
(…私にも、出来たんだ…)
終わり
最初のコメントを投稿しよう!