桃の花言葉(♂×♀)

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桃の花言葉(♂×♀)

桃の花言葉【私はあなたのとりこ】 「なぁ、こっち向いてくれよ…」 「静かにして、今集中してるのよ…」  声を掛けられた女は、少し強めの口調で、声を掛けて来た青年に言葉を返した。 「そんなの後で良いから、俺の方見てよ…」 「もうっ、本当に後少しだからもう少し待ってて…」 「…何回目の後少しだよ…」  かれこれ数時間はこの調子で、女はある事に集中していた。 ふて腐れた様に呟く青年は女の肩に頭を預け、静かに目を瞑る。  いつもの事だからか、肩に掛かる重みも気にせず黙々と作業を続ける女。 相手にされない青年はゆっくりと意識を手放した。  あまりにも集中していた為、女は青年が眠りに就いた事にも気付かず、再び数時間が経過してしまっていた。 「これで…、よしっ!!やっと出来た…て、嘘もうこんな時間!?」 「すぅ…、すぅ…」 「え…」  漸く作業を終えた女は時計を確認し、かなりの時間を費やして居た事に気付くと同時に、隣から聞こえる寝息に視線を移し、青年が眠っている事に小さく息を吐く。 それから、そっと青年の頭を自分の膝の上に下ろして、髪を梳く様に頭を撫でた。 「ごめんなさいね…。夢中になるといつもこうなんだから…」  呟きながら、先程終えたばかりの物へ視線を移す。 「貴方の為にと思って、頑張っていたのだけれど…」 雑ではあるが、何とか縫い付けられている、青年のYシャツボタン。 縫い物が苦手な為、始めたは良いが、つい時間が掛かってしまったのだ。 「貴方に、喜んで欲しかっただけなのにね…」  寂しそうに呟くと、膝の上で眠る青年にそっと顔を近付けて、額に唇を落とした。 「ん~…、ん?あれ、終わったの?」 「えぇ…」 「そっか…、やっと俺の事見てくれるね!!」 「ごめんなさいね、一人にしてしまって…」 「まぁ…、これから俺の事だけ見ててくれるなら、許して上げなくも無いかな?」 「…ありがとう。でも、大丈夫よ」 「?」 「私は、貴方しか見てないから…。あの日から、ずっとね」 そう話す女は、とても優しい瞳で青年を見つめるのだった。 終わり
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