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苺の花言葉(♀→♂)
苺の花言葉【尊敬と愛】
いつもいつもあの子を見ている内に、私の中にはある感情が芽生えていた…。
転んでも泣く訳でも無く、褒められたからといって喜ぶ訳でも無い。
好きな物にはとことん執着する。
誰にも取られない様にいつも側に置いておき、それにだけは満面の笑顔を見せる。
そんなあの子を、私は好きになっていた。
こんな気持ちは初めてだった。
あの子と違って私は全く物には執着しない。
褒められれば嬉しいし、転んだら泣く。
全く違う私とあの子。
なのに、好きになったのだ…。
気付けばあの子を目で追っている自分がいて、だけど自然とそれを受け入れている自分もいて…。
もっと近付きたかった。
話したかった。
だから私は、あの子の視界に映る為に色々な事に力を入れた。
兎に角目立つ様に…。
いつの間にか私は、沢山の人から尊敬される様になっていた。
何でも一人で出来る人間だと、周りの人達は口を揃えて言い、私を遠巻きに見る様にもなった。
その中にあの子の姿もあった。
漸く、あの子の目に私が映る様になった。
それが嬉しくて嬉しくて、私はあの子に声を掛けた。
「ありがとう。」
「え?あの…。」
驚いた様子で私を見つめるあの子に、笑みが零れる。
「やっと、話し掛ける事が出来たわ…。」
「僕に何か用ですか…?」
「気持ち悪いと思われるかもしれないけれど…、貴方に私の事を見て欲しかったの。」
「え…。」
私は彼に、今までの事を全て話した。
戸惑ってはいたけれど、少し照れていたみたい。
全て話し終えた私は一度口を噤んで、ずっと伝えたかった言葉を彼にぶつけた。
「私は…、貴方が好きです…。」
「………………。」
都合の良い返事を期待している訳じゃ無い。
ただ、本当に伝えたかっただけ。
「本当に、伝えたかっただけだから…。深く考えないで。」
「………ありがとうございます。」
言葉を受け取ってくれただけで、嬉しくて私は今にも泣き出しそうだった。
けれど、彼が続けて言った言葉に私は涙が溢れた。
「あれ?先輩、もしかしてあの時の、お姉さん…ですか…?」
「!!」
「小学生の時、公園で何度か一緒に遊んでくれたお姉さんが居たんです。だけどその人、すぐに会えなくなっちゃって…。」
「………覚えててくれて、ありがとう…。」
私の恋は、愛へと変わった。
終わり
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