花梨の花言葉(♂×♂)

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花梨の花言葉(♂×♂)

花梨の花言葉【唯一の恋】  あの方は、小さい頃から俺に絶対の安心感を持っていて、あの方を慕っていた俺も、あの方の期待を裏切らない様にとずっと必死だった。 「なあ、お前にはずっと助けられてばかりだったな…。」 「そんな…。貴方様のお側に居られて、私はとても幸せでした。」  まさかの一言だった。 ‘お前に暇をやる。意味は分かるな。’ けれど、その一言を聞いた俺は、告げられた言葉やその言葉の意味よりも、どこかホッとした自分自身に一番驚いた。 あの方には、自分の生涯を捧げても良いと思う程だったから…。  自分の中では分かっていたんだろうがな…。 自分があの方を慕う理由も、本当は、既に傍に居られなくなる程あの方に主人以上の好意を抱いていた事も、そのせいであの方を守る事に自信が無くなっていた事も。 だからこそ、暇を貰った理由もその事に気付かれたと思っていたんだ。 「…本当に、ありがとう。」 「こちらこそ…。貴方の様な方に出逢えた事が、私の一生分の幸運だと思っております。」 「お前は、本当に世辞が上手いな。」 「お世辞などではありません。」 「真面目で、器用で、優しくて、この家の使用人にしておくのは勿体無いと思い私の側に置いたが、お前は本当にずっと良く働いてくれた。文句も言わなかったな…。」  呼び出した俺を優しく見つめながら、この方はどこか遠くを見つめていた。 「貴方様の元に居られるだけで、幸せでしたから…。それ以上に何を望む事がありますか。」 「その真面目さ、最後まで変わらないか…。今日で最後なんだ、私に我が儘の一つでも言ってみろ。」 「そんな…。」 「今の私に叶えられる事なら、叶えてやる。…この家も近く無くなる。気付いてたのに、私には何も出来なかった…。」 「………。」  いつの間にか、この方の家は借金まみれになっていたらしい。 この方の父親や母親が、先々代や先代が築き上げた財産も何もかもを使い果たし、挙げ句の果てには、その贅沢な生活が止められなくなっていて、あちらこちらから借金をし続けていたのだと聞いた。 「父と母から聞いた時は信じられなかったよ…。でも、二人が亡くなる前に使用人達は殆ど居なくなっていたし、周りの人間達も徐々にだが私への態度が変わったのを見て、本当なんだって感じたんだ…。」 「…何故、私に…?」 「お前には、小さい頃から助けられて来たからな…。恩返しも兼ねてだよ。」 「恩返し…。」 寂しそうに笑うこの方に、俺は不謹慎だと思いつつもときめいた。  いつも傍で見ていたこの方は、気を許している俺にさえ弱音は吐かなかった。 だから、こんな弱味を見せるこの方に、これが本当の別れなんだと言われているみたいで、胸を締め付けられた。 「本当に、何か無いか?私がお前にしてやれる事。」 「…本当に、何でも良いんですか?」 「私が叶えられる範囲ならな。」 「………貴方を下さい。」 「………え。」 「貴方自身を私に下さい。」 「私が…、欲しい?」 「はい。」 「………ふっ、こんな借金まみれの私は1円にもならないぞ?」 「それでも、構いません…。」 「物好きだな…。」  言いながら苦笑するこの方に、俺は自分を押さえる事が出来なかった。 ‘ギュウ’ 「…貴方を頂いても、宜しいんですか?」 「ああ…。お前にやるよ、私自身をな…。」 (手に入れた…。絶対に、手に入る事は無いものと思っていた者を、手に入れた…。) この方を抱き締めながら、俺は初めて心の底からの幸せを感じたのだ。 終わり
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