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4人は外に出た。大岩の御神体、サマイクル命の前に立った。
まりかが壺を置き、組紐の封を解いた。ふたを取り、離れる。
りーんりーん・・・祓鈴を鳴らした。
壺の口から虫が出て来た。半透明な強欲たちは震えるように地面を這い、大岩をよじ登る。
やがて、吸い込まれるように岩の中へ消えた。
「強欲を人の中から祓い出しても、きちんと封じる手段と場所が確立している必要があります。それが無ければ、事故が起こります」
久美が静かに語った。
「封じる手段と場所・・・」
シェーリは母を思った。
母は強欲の重みに苦しみ、川に身を投げるざるを得なかった。それほどの強欲たちは、いったい何人分だったのか。どれほどホーチミンの人々の強欲は重かったのか・・・胸の苦しみがぶり返した。
こちらからアレが見えるなら、向こうからも見える・・・順は久美の言葉を思い起こした。かつて、自分に取り憑いていた強欲は、今はどこへ行ったのか。自分の中で小さくなって眠っているのか。それを探るには、巫女のような訓練が必要だろう。
神社からの帰り、バンには荷物が増えた。
エレキギターが3台、弦がゆるんだり切れたりしてるやつ。ギターアンプは2台、動くかは未確認。キーボードは1台、こちらも動作未確認。
ハンドルをにぎりながら、順は努めて明るく振る舞った。
「昔は、おれは不良のワルだったんだ。いろいろやって、人に言えない苦労をしたつもりだったけど、きみに比べたら・・・薄い苦労だ」
ははっ、軽く笑って沈みそうな気分をごまかした。
シェーリも努めて顔を上げて前を見た。
「あたしの力は呪いではない・・・」
久美の言葉を胸の中で繰り返した。
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