檸檬の花言葉(♂→♂)

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檸檬の花言葉(♂→♂)

檸檬の花言葉【心からの思慕】 「大きくなったなぁ~…。」 「…何だよ、急に…。」 「別に…。小さい頃は、何でも俺を頼って来てたのにな~と、思ってな。」 「いつの話してんだよ…。」  お茶を飲み、どこか遠い目をしながら自分を見つめる男に、青年はすこし違和感を感じていた。  男と青年は、青年が幼い頃に知り合って以来の友人で、大きくなった今でも、たまにこうして会ってはお茶をする仲なのだ。 「たくっ、何かあったのかよ?」 「…何で?」 「…何か、元気無いから…」 「ははっ。そういう所は変わらないんだな。」 「馬鹿にしてんのか?」 「…いいや、嬉しいんだよ。そうやって心配してくれたり、俺の元へ来てくれるのがな…。」 「…意味分かんねぇし…。」 「本当に、嬉しいんだ…。」  心から嬉しそうに話す男に照れ臭くなり、青年はふいっとそっぽを向いた。 そんな青年を寂しそうに見つめた男は、そっと青年へと手を伸ばす。  頭を優しく撫でる男の手に気付き、ちらっと男へ視線を向けた青年は、今まで一度も見た事の無い男の表情に胸騒ぎを覚えた。 「っ!!…何か、あったんだろ?」 「………。」 「…俺なんかには…、言えないのかよ…。」 「…ごめんな…。」 「~…っ、分かったよ…。俺は、もう何も聞かねえからな…。」 「あぁ…。有り難う。」  それから数日後、男は何も残さずに姿を消した。  青年が今まで遊びに行っていた男の家には、大きく〈売家〉の文字が書かれた看板が立っていて、近所に男の行方を知る者は誰一人として居なかった。 「………何で、急に…。」  男の様子が気になって家を訪ねた青年は、あまりにも突然の事に、看板の前で立ち尽くした。 引っ越しの話も、行き先も聞いていない。  二人が会う方法はたった一つで、青年が男の家を訪ねる事だけだった。 その為、他の連絡手段は一切無く、青年もそれで良いとずっと思っていたのだ。 (どこに行ったんだよ…。) 「あら、本当に居たのね。」 「え?」 「ふふ、ご免なさい。これを貴方にって。」  声のした方へ顔を向けた青年の目に映ったのは、どこか男と似た顔立ちの女性で、青年が呆然としていると女性は苦笑して、一枚の封筒を手渡した。 「貴方への伝言もあるの。‘有り難う、またな’って。」 「…あ、貴女は、一体…?」 「彼の妹よ。」 「妹…。あの、伝言って、彼はどうして…、どこに行ったんですか!?」 「………私にも分からないんだ。兄がどこへ行ったのか…。」  寂しそうに笑う妹と名乗る女性に、青年は手渡された手紙を見つめる。 その様子を見ていた彼女は‘読んであげてね’と言って、帰ってしまった。  青年も家に戻り、部屋に入ると、早速ベッドに横になりながら手紙を広げた。 そこに書かれていたのは、男の青年に対する想いばかりで、何度も何度も‘ありがとう’と繰り返されていた。  しかし、最後に書かれていた文字に、青年は腕で顔を隠して涙を流したのだった。 「…何だよ…。俺だって、お前の事…。」 (早く会いに来い、バーカ…。) ‘次にお前と会えたら、直接伝えるから。その時は、ちゃんと聞いてくれよ’ 終わり
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