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一位の花言葉(♂→♂←♀)
一位の花言葉【残念】
(また、あいつはあの娘を見ているのか…。)
俺は、幼なじみのこいつが、あの娘をいつも遠くから見つめているのを知っている。
どんな気持ちで、どんな想いを抱いてあの娘を見つめているのかは知らないが…。
長年の付き合いだから、大体の事は分かる…。
「おい。」
「え?って、うわあっ!!」
「‘うわあっ!!’って…。何をそんなにキョロキョロしてるんだ?」
「い、いや、別に…。あの娘は…。」
「トイレ。」
「そ、そう…。」
「お前なあ…。」
「何だよ…。」
俺の事を上目使いで睨み、どこかバツが悪そうに俯いた幼なじみ。
こいつがいつからあの娘に好意を寄せているかは知らないが、何と無く、あの娘を目で追うこいつに苛立っていた。
「…いつからだ?」
「は?」
「いつ、あの娘を好きになったんだ?」
「なっ!べ、別に好きな訳じゃ…。何と無く、目を離せないと言うか…。」
「ふ~ん…。」
「や、やましい気持ちが有る訳では決して無いからな!!」
「…本当か?」
「ああ。嘘じゃない。」
「………そうか。」
嘘を吐けないこいつが、俺の目を真っ直ぐ見ながら言うんだから嘘では無いと信じ、俺はそれ以上の追及を止めた。
その事にホッとしたのか、胸を撫で下ろし、笑顔を見せる幼なじみに、俺の心臓は脈を早めた。
「あ、そう言えば。お前が見たいって言ってた映画、明日から上映するって…。」
“ガチャ”
「お父さん、ただいま!」
「ん?お帰り…って、トイレ行ってだけだろ。」
「良いじゃない!そう言えば明日、お父さんの見たがってた映画が近くの映画館で放映開始だって!!」
「そうか…。見に行って来るかな。」
「あたしも行く~!!」
「う~ん…。なら学校が終わったらな。」
「は~い!!あ、おじさんもどう?」
「う、うん…。一緒に行っても良いかな?」
「構わねえよ。」
内心、この娘と一緒ならこいつも来るのでは無いかと言う気持ちから話しに乗ったのだが、本当に行ける事になるとは…。
しかし、この娘が誘うとは思ってもみなかった事なだけに、‘この娘もまさか…’と疑ってしまった。
(父娘だしな…。)
「どうしたの、お父さん?」
「?」
「いや、何でも無い。」
「そう?なら良いけど…。そう言えば、おじさんは帰らないの?」
「え…、いや~…。」
「何だよ?」
俺へと目線を向けて来た幼なじみに疑問をぶつけると、真っ赤な顔をして俯かれてしまい、理由が分からず首を傾げた。
その時、娘がこいつの腕を掴んで立ち上がらせ、‘おじさん、もう帰るって’と笑顔で俺に告げた。
何事かと呆けていると、そのまま幼なじみを玄関へと連れて行き、背中を押しながら家から外へと押し出した。
「おじさん、またね!」
「………。」
「気を付けてな。」
チラチラとこちらを見ながら歩いて帰る幼なじみを見送っていると、隣で一緒に見送っていた娘が急に腕に抱き着いてきた。
こちらを見ていた幼なじみは一瞬固まっていたが、しばらくすると何かを叫びながら走って行ってしまった。
「うわぁぁぁぁっっ!!」
「…お前なあ…。」
「やっと、お父さんと二人きりね!!」
「…………やっぱり好きなんじゃ…。」
「え…、ま、まさかお父さん気付いてるの!?」
「ん?え、あ…。」
「やだ~…。あの人にお父さんは絶対渡さないから!!」
「…は?」
娘からの発言で俺は訳が分からなくなり、走り去るあいつの後ろ姿を見つめていた。
(え、あいつが好きなのって…。)
終わり
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