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林檎の花言葉(♂→♀)
林檎の花言葉【選ばれた愛】
両親が決めてくれた全く知らない男との結婚なんて、私にとってはどうでもいい話だった。
小さい頃から一人娘の私にはとても甘い両親で、私の欲しい物を何でも買い与えてくれた。
私自身もそんな状況に満足していたし、両親の決めた事に逆らう気も無かったから、結婚の話が出た時も驚く事は無かった。
相手だって、私の為にと用意してくれたんだと思っていたから…。
「いや~、嬉しいです!!本当に急な話だったんで。」
「いえ…。」
「初めは絶対に断られると思ってましたから。」
相手は私より少し年上で、身なりも良いとても明るい人だった。
‘婚約者なんだから一度会っておいた方が良いだろう’と、両親からの勧めで会う事になったけれど、相手に興味すら無い私は、相手の話に合わせるだけの会話をしていた。
「それにしても、よく相手を確認もせずに結婚を承諾しましたね。」
「父や母が、私の為にと用意して下さったものに、意味の無いものなんてありませんでしたから…。」
「そうですか…。」
苦笑する彼に何が可笑しかったのか分からず、私は首を傾げた。
そうして時間は過ぎて行き、彼との時間も終わりを迎え様としていた。
「もうこんな時間ですか…。僕の事、分かって頂けましたか?」
「えぇ、大体は。」
「それは良かった。」
彼の言葉に、私はふと、自分の事を一切話して居なかった事に気付いた。
(そう言えば…。)
「どうしました?」
「いえ…、何でも。」
「そうですか?あ、そうそう、もう少しで誕生日でしたよね?」
「え?えぇ…。」
「誕生日か…、僕達の結婚記念日にしましょうか。」
「え…それは…。」
とても楽しそうに話す彼に驚きつつ、誕生日は両親と過ごすものだと思っていたから、断ろうと声を掛けた。
だけど、瞬間見せた彼の表情に、私は言葉を失った。
「あなたは拒否出来ませんよ?これは、あなたの両親が認めてくれますから。」
「え…。」
「あなたの両親は僕に逆らえ無い。」
「どう言う事…ですか?」
「そのまんま…。でも、大変でしたよ?あなたに一目惚れして、あなたの事を調べ回って…。まぁ、あなたが全て両親の言う事に従うと知ってからは、楽でしたけど」
「…………」
私を見つめる彼の目つきは、身体中に恐怖と寒気を走らせた。
「漸く手に入れた…」
彼は両親が私の為に選んだのでは無く、両親が彼の為に彼を選ばされた事や、両親に逆らわ無い私は、彼に逆らえ無い事など。
その一言は、全てを語っていたのでした…。
終わり
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