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フェチズムは、物凄く難しく厄介な代物だ。 到底納得することは出来ない。 そして、その上に重なる対人関係はもっと厄介。 カミングアウトできる人間は限られてくる。 私たちのように、頭のオカシイ人間が世の中にいるのだから、理解出来ない人間がいるということはとくに驚くことじゃない。 大切に構築させていく関係はほんの僅かな希望に賭けるしかない。 身を滅ぼすフェチズムは確かに存在する。 意識を変える必要が、ある。 怯えたままではなにも変えられない。 そして、なにか行動を変えてはならない。 隙間を縫って生きていく。 長いトンネルを歩いている。 けど、隣には藍がいる。 なら私はこの自分の運命に逆らわずに行けるかもしれない。 明日、明後日のことは分からない。 人間が好きな異性とセックスするのとなんら変わらない欲望だ。 だから、明日……しいて言えば数時間後にその欲望がわいてくるかもしれない。 分からない。 どうなるのか、なんて分からない。 それでも生きるしかない。 それでも、世間一般的な模範的な考えで生きるしかない。 フェチズムなんてクソ喰らえ。 私は、そいつを飼い慣らす。 手離せない性癖をコントロールしてやる。 藍と一緒に。 私はこの後、大切な人と下着を買って家に帰る。 ただいま、と普通に笑顔で夫のもとに戻る。 それが私の普通。 「じゃぁ、行きましょ 遅くなったら夕飯の支度が出来ないわよね」 「……あ、昨日食料品の買い出しに行けなかったの」 欲望に襲われる食料品売り場。 財布を鞄から出した藍は、分かっているわよ。と微笑んだ。 私たちの日常はなにも変わらない。 【 了 】
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