老人の正体

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老人の正体

 そして、老人は迎えの白い高級車に乗り込み、後部座席でスマホを取り出し、電話をする。 「はい、ゼウス様。賭けは、私の勝ちでございます。やはり、人間どもを亡ぼすのは、もう少し様子を見た方がよろしいかと思います。愛と美のシンボル、金星を受け継ぎ志し者、ハニエルは、人間に転生し、人間界の辛く苦しく貧しい環境に育っても、無欲で純粋です。土壇場でも、自分の身を省みず仲間を救おうとしました。はい、天使の心を失っておりません。見上げたものです。はい、ウリエル、サリエル、ゾフィエルもよくやってくれました。アカデミー賞ものです。はい、人間どもの記憶もきれいに消して、仕事にぬかりはありません。ご安心ください。はい、それでは失礼します。」  電話の相手は全知全能の神、神々の王、ゼウスであった。  そして、この老人の正体は、全天使に号令する、神の御前のプリンス、 ミカエルであった。ミカエルが本来の姿に戻ったと同時に、白い高級車も本来の姿、白いペガサスがひく馬車に戻った。  白いペガサスは眩しい光に包まれ、天高く優雅に駆けて行く。  空には、金星がひときわ美しく輝いていた。
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