髪の家

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髪の家

保険業界に長くいるRさんは家の夢をよく見るそうだ。 出てくるのは過去住んだ家ばかりである。父が転勤族だった彼女は成人するまで、かなりの回数引越しを繰り返している。 「小学生に上がるかそれくらいの頃に住んだ古い団地の夢だったんですよ。 居間には母親がいて、自分は暇なようで家の中をウロウロしてました。」 Rさんは自室の子ども部屋に来たところで足が止まった。 黒い束が落ちている。真ん中を白紙でちょんと結えられた、髪の毛だった。 水分がなくバサバサしていて汚らしい。人形の髪のようにも見えたが、いやに生々しく触るのが躊躇われた。 何だこれ気持ち悪いな、どうしようかと迷っているうちに目が覚めた。 気味の悪い夢を見たと思ったが、丁度その時期に入った途中入社の社員がひどく物覚えの悪い男性で、 教育係を兼任していたRさんはそんな事など数日経つとすっかり忘れていたそうだ。
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