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カビかそうでないかを議論しても仕方ないので、私はとりあえず義歯の修理を試みることにしました。
通常は、私たちプロの人間が扱えば、元に近い形に戻すことができるのですが、どうやっても戻らない。
割れかけていたときに、気づかずに思い切り噛み続けていて、割れても強引に噛んで変形させてしまったものと見られます。
下顎義歯なしの顎堤(歯茎の土手)で、どうやって噛んでここまで変形させることができたのか。
謎が謎を呼ぶ…
仕方ないので、ご婦人に「変形しちゃって戻らないので、左側は折れているところから切っても良いですか」と訊きました。
この入れ歯、有歯顎(歯がある状態)の時に作ったもので、ご本人が言うように今はぜんっぜん顎堤に合ってない。
口を開ければ落っこって来る状態。
だから左上3~右上7の中途半端な義歯に改変しても、大して変わらないだろうと思ったのです。
ところが。
「困るわぁ、左がないと食べられないもの」
と、さも迷惑そうに仰る。
はあ???
こんな義歯、あってもなくても一緒じゃね??
どうせ嚙み合わせるべき下顎義歯は無いんだし!
とも言えないので、「そうですか、ではドクターと相談してまいります」と院長のところへ。
「左側がないと食べられないそうなので、一度ぶった切って口腔内で正しい位置でつないでいいですか?」
と訊くと、院長は
「あー…このままレジンで埋めちゃうだけでいいです。
新義歯作るし」
とそっけない返事。
そうは言っても…
あまりに可哀相だよ、新義歯ができるまでこれそのまま使えっての…
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