三月十六日(水) 昼 栄月堂ブックセンター

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 成島は窓を見上げた。さっきまで薄日が差していた気もするが、今にも一雨来そうな空気が辺りに満ちている。念のため傘用のビニール袋を外に出した方が良さそうだ。桜の開花予想も遅れるほど、肌寒い日が続くが、突然夏日のような気温を叩き出すこともある昨今、季節感がどんどん薄らいでいく。  ――しかし、雨ばかりだな。  裏口近くの物置場に向かう途中、パートスタッフが恐る恐る成島に近寄ってきた。 「あの、店長……?」 「は、はい!どうしました?クレームかな?」  どうしてもベテランパートに対しては極端なほど低姿勢になってしまう。  ――仕方ない。  人手不足な状況の中で不快な思いをさせて辞められても困るのだ。
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