三月十六日(水) 昼 栄月堂ブックセンター

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 パートスタッフは少し面倒そうな顔をして言った。 「いいえ、あの、クレームとかお客様とか……ではないと思うんですけど、お若い男性がいらっしゃってまして」 「お若い男性?」 「はい……あ、あちらの方です。あとはよろしくお願いします」  スタッフが立ち去ると同時に、書棚の間から若い男が姿を見せた。上質なスーツに身を包み、小脇にグレーのスプリングコートを抱えて会釈をする。 「おはようございます。お忙しいところ、失礼します」  その言葉に、成島も自動的に反応する。 「ああ、すみません……今は、ちょうど間に合ってまして……数冊くらいでしたら、まあ余裕あるかもしれませんが……」
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