三月十六日(水) 昼 栄月堂ブックセンター

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 すると、相手の男が吹き出すように笑った。 「私は、版元の営業ではありません。突然、こちらこそ申し訳ありません」  確かに、その物腰といい風格といい、営業のような必死さがまるで伝わってこない。成島は首を傾げるしかなかった。 「えっと、それではどういった……」  成島は言葉を飲んだ。  青年が、じっと成島の胸元を見つめている。  その視線の先にはネームプレートがある。店のスタッフは全員付ける決まりになっており、成島は店長なので肩書も入っている。
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