三月十六日(水) 昼 栄月堂ブックセンター

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 しかし、津田がゆったりと語り出した言葉は成島の予想とは異なるものだった。 「ご安心ください。我々は、あなたに損害や危害を与えるつもりはないのです。ただ、力を貸していただきたいだけです。あなたにしか出来ない……事業承継についての話です」 「え?」 「簡単に申し上げれば、事業の整理と申しましょうか。弊社は成島喜一さんの会社『セイトウ』と合併して出来上がった会社ですが、このたび、再び製薬事業については新会社を設立し、そちらに一切の経営基盤を移そうと考えていたのです」  まるで社内プレゼンでもするかのように、津田は左手をキビキビと動かしながら一方的に話し始めた。そのおかげか、唐突であるにも関わらず、成島にも内容は伝わってくる。それがまた不気味でもあった。
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