03.孤独な猫

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施設での晩飯が終わって、小さい弟達が眠りにつくと俺は外へ出た。 冬の公園なんて、寒くて誰もいない。 だから、居心地が良かった。 特にこのトンネル遊具に寝転がると最高だ。 冷えたコンクリートが俺の体温を奪い、徐々に熱をもっていく。 幼い頃から暗闇が好きだった。 明るいと、見たくないものまで見えるから。 愛情の代わりにゴミが積もった安アパートの日常。 壁に掛けた下手くそな絵。 暗闇の中での遊びは、楽しかったことを覚えている。 大人になるにつれて、暗闇の遊び相手は、俺と遊んでくれなくなったけど。 トンネル遊具の暗闇なら、現れるのかも知れない。 だけど、満月でもないのに、明るい三日月と街灯が邪魔をする。 みぃ、みぃ……。 仔猫だろうか? 親猫を呼ぶ声が聞こえる。 くそっ、猫の世界も、育児放棄(ネグレクト)かよ。
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