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 女は話を聞いて、涙した。  そして、それを己が目で確かめようと外へ飛び出した。  村を駆け回り、女は目の当たりにする。全てが祖母の話どおり、女が胸の内で望んでいたとおり、何もかもが現実となっていることを。  その時、炊き出しの婦人達の中に母親がいるのを見つけ、女は急いで駆け寄った。 「母さま」  ふいに現れた娘に、母親は驚いて目を見開き、その顔を今にも泣きそうに歪めると、言葉も出ない様子で両手を伸ばした。  その手を、女はしかと握りしめた。 「無事だったのですね……ああ、良かった……」 「心配をかけてすみません。おばあさまから聞きました。村は干ばつから救われたのですね。それに、皆がこんなにも支え合って……こんなに嬉しいことはありません」 「そんなことより……あなたはどこへ行っていたのです」  母親が尋ねる。 「私は、竹瀬山へ行っていました。竹瀬山の神に、この村を救ってもらえるようお願いに上がろうと」 「竹瀬山へ? では、もしやこの恵みは……」 「いえ、私は、神に願いを届けることはできなかったのです。あの山を途中まで登ったところで、ふと、村に戻らなければと心をせき立てられ、急いで引き返したのですよ。でも、まさか八日も経っていたなんて……」 「ずいぶん遠くまで、苦労をしましたね。さあさ、お腹も空いているでしょう。これをお食べなさい。おばあさまにも持って行ってちょうだい」  そう言って、母親は芋粥と焼いた川魚を二人分、器に取り分けて女に渡した。 「ありがとうございます。おばあさまといただきます」  女はその場の皆に丁寧に頭を下げ、家へと引き返した。  
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