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 女は今ひとつ理解できずに困惑した。  そして、男の言うことが本当であれば、確かめるべく村へ急がねばと思った。 「村へ戻るのですか」  男が言う。 「あなたはとても清らかなお人です。ここで私と共に暮らしませんか。共に神に仕え、子をなし、この恵まれた地で穏やかに時を歩みましょう」  それは女にとって、嬉しい提案だった。女もまた、男を好意的に思っていたのである。  しかし女の表情は曇る。 「とても有り難いお申し出、かたじけなく思います。ですが、私はどうしても村へ帰らねばなりません。村がどうなったのか、この目で見届けないことには、私だけここで悠長に生きているわけにはいかないのです。その代わり、村の様子を確かめたら、私は必ず戻ってまいりましょう。人々に安心が戻ったのを見届けたら、その時は再びここへ戻ってあなたと共に生きましょう」  そう言うと、女は深く頭を下げて、駆け出した。山を下りるべく、先ほど出て来た隧道へと。  男はあっと小さく声を上げ、思わず女の腕を掴もうと手を伸ばしたが、ぐっと堪えてその手を握りしめ、悲しそうな顔で立ち尽くしていた。  
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