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 山を下りてきた女は、目の前に果てしなく広がる瑞々しい草原を見て、驚きと喜びで胸がいっぱいになった。  いったいこれはどうしたことだろう、私はずっと、悪い夢を見ていたのだろうか。夢を見たままここまで来てしまっていたのだろうかと、女は思った。  とにかく早く村へ戻らなければ。その気持ちだけが、先ほどから妙に女を駆り立てていた。  女ははやる足に任せて村へと歩を進めた。  空腹も喉の渇きも忘れて、ただひたすら村への道のりを急いだ。  集落に近づくと、ひび割れしかなかったはずの畑はきれいに耕され、(うね)が作られているのが見えた。  川では人々が釣りをしている。  女は釣り人に駆け寄って話しかけた。 「魚がいるのですか。干ばつはどうなったのです」  すると、釣り人は驚いた顔で女をまじまじと見た。 「あんた、いったいどこに居たんだい。おっかさんが心配しているから、早く家に帰っておやんなさい」  女は一刻も早く事の成りゆきを聞かせてもらいたかったが、それよりも家族に顔を見せるほうが先だと思い直し、住まいのある村の中心部へ走った。  
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