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 女の家は木や藁を組み合わせて作られたものだ。そこに、祖母、父母、弟妹達と女の七人が暮らしている。 「ただいま戻りました」  家の中を覗くと、年老いた祖母が横たえていた体を起こし、 「おお……戻ったのかい……、心配したんだよ……」 「おばあさま……」  女は老婆の元へ歩み寄った。 「皆は……皆はいずこへ? 母さままでもが家を空けるなんて、一体何があったのです」 「ああ……村の仕事が忙しくてね、皆出払っているのさ。じき帰って来るよ」  それから女は老婆に詳しい話を聞いた。それは信じられないことだった。  なんと、女が姿を消してから今日で八日目だと言うのだ。  女がいなくなった翌日、この一帯に恵みの雨が降った。それはそれは激しい雨で、村人たちはこぞって外へ出て喜んだ。  雨は丸一日降り続き、大地を潤した。それから三日ほどは断続的に雨が続き、降り始めて五日目には快晴となった。  大地には草の芽が生え、土は潤い、そして川は大幅に増水し、上流からたくさんの魚が流れてきた。  この幸運を前に、村人たちは皆で寄り合って、役割分担によって村を立て直そうと決めた。  村人たちの当座の食糧となる魚を釣る係、川や井戸から水を汲む係、田畑を耕し種を植える係、飢饉で亡くなった者達を葬る係。そして、皆に平等に食事が行き渡るよう炊き出しをする係。なんと、富める者も貧しい者も、各々備蓄している全ての食糧を差し出したと言うのだ。  年寄りや乳幼児、そして病人などを除く全ての村人が結集し、次の収穫期までもう誰一人餓死させまいと、全ての者の生活を守るべく力を合わせたのである。
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