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その後、女の村では噂が立った。
村が救われたのは竹瀬山の神の思し召しで、女はそのための生贄になったのだと。
女の家族はたいそう悲しんだが、せめてもの供養にと、竹瀬山の入口に祠を造り、竹瀬山の神と女を祀った。
そして、村人たちが代わる代わる足を運んだ。神への供えに、握り飯を携えて。
竹瀬山の神であるところの黒牛は、時折その様子を眺めていたが、握り飯へは興味を示さず、変わりに男と女がありがたくそれを食した。男は女の故郷の味として、握り飯をたいそう好んだ。
二人は幸せだったのである。
女の村は竹瀬山の神の加護の元、長く穏やかに栄えたという。
〈終〉
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