3/3
21人が本棚に入れています
本棚に追加
/20ページ
 その後、女の村では噂が立った。  村が救われたのは竹瀬山の神の思し召しで、女はそのための生贄になったのだと。  女の家族はたいそう悲しんだが、せめてもの供養にと、竹瀬山の入口に(ほこら)を造り、竹瀬山の神と女を祀った。  そして、村人たちが代わる代わる足を運んだ。神への供えに、握り飯を携えて。  竹瀬山の神であるところの黒牛は、時折その様子を眺めていたが、握り飯へは興味を示さず、変わりに男と女がありがたくそれを食した。男は女の故郷(ふるさと)の味として、握り飯をたいそう好んだ。  二人は幸せだったのである。  女の村は竹瀬山の神の加護の元、長く穏やかに栄えたという。 〈終〉
/20ページ

最初のコメントを投稿しよう!