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「あれ、お母さんだけ?」
リビングのドアを開けて入ってきたのはその女の娘。
「まだお風呂入ってんの?」
黒髪と首回りが見えるベリーショートの髪型は芯の強い印象を与える。一方、灰色のゆったりとした大きさのスウェットは、首から上の雰囲気とはギャップを感じさせる。
「みたいね。仲良くていいんじゃない」
冷蔵庫から缶ビールを持ってくると、母親の横に座った。
「あー、疲れたー。明日は5時には家出ないと間に合わないから、お母さん、早く起き過ぎた時は声かけてね」
「それはいいけど、目覚ましはかけときなさいよ」
「うん、かけとく。あっ、お母さんのスマホ貸して。お母さんのも目覚ましかけとくから」
窓の外は暗く、目を凝らせば薄手の白カーテンの奥にも室内が反射して見えた。
薄茶色をした低めの箪笥の上には2枚の写真が飾ってあり、ひとつは家族6人が写っているもの、もうひとつは中年と呼ぶにはまだ年若き男の遺影らしき顔写真であった。
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