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マサがゲームの準備をしている間、互いに無言だった。
微かに震えを感じる手。
湯船で温もることなど殆どなかったからか、その身体は冷えたままだった。
髪は完全には乾いていない。若干濡れているからか少し風を感じる。
嫌な緊張もあった。飲み込みたくない自分の唾液も飲み込む。
視線を感じる。嫌悪という言葉を意識はしていないが、それと同様の感情を抱いているのは間違いないようであった。
「準備できた?
俺のことは気にしなくていいから」
カズはまた笑顔で言って来た。
身体の反応は心の反動のようであった。
翌朝、トイレで用を足すマサ。パンツを下ろすと乾いた唾液のあの独特の臭いが鼻を突いた。
貯水タンク用の水道でその臭いの元を洗い流す。
歯を磨く時、無意識に舌が思い出したように動き出す。喉奥は空洞を作ることが癖になっていた。
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