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男は揺れる電車の壁に寄りかかるように立っていた。満員とまではいかないまでも、身動きが適度に取れる程に人は多かった。
光が当たらないとわからない程度に染められた茶髪に、艶やかでありながらさらりと下ろした髪型。
整髪剤で整えられた様子もなく、その少年のような顔立ちが相まって若さよりも幼さを感じさせる。後ろ首が隠れるかという程に伸びた髪の隙間からイヤホンが見えた。
落ち着いた色の中に適度に明るさを交えたタイトな服装は清潔感もあった。
電車内の景色は普段とそうは変わらない。
学生の数が若干少なく感じたが、同じ時間によく見る乗客も数人は確認できた。
だが、相手も同じ認識かはわからない。自分はその人を印象強く記憶していたとしても、相手の記憶には残ってないかもしれない。
日常の景色に飽きてくると思い出したようにスマホを取り出す。
SNSにDMが来ているという通知があった。確認してみると相手のアカウント名は「サム」と表示されていた。
(おはよ
今日ひま?)
(おはよー
マサにしてはやけに早起き
学校終わったらバイトないから)
「よっくん、おはよ」
返信をしていると男が声をかけてきた。
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