4人が本棚に入れています
本棚に追加
「あっ、おはよ」
よっくんはそのままに返信し、その男に言った。
「並んでたけどいなかったから休みなんかなって思ってた。
別の車両にいたの?」
よっくんに声をかけてきたのは少しぽっちゃりとした愛嬌ある雰囲気の男。
ジーパンにダウンジャケット。髭は剃ってきているようだが、濃いようで肌荒れの部分に僅かな剃り残しが見えた。
「それがさ、うちの犬がギリギリになってうんこしたからさ。たぶん餌やるのが少し遅くなったからだと思うんだけどさ。
放っとこうかなって思ったけどかわいそうじゃん?それでね。
それよりなんか嬉しそうにスマホ見てたけど何か良いことあったん?」
細い目で笑うその男。よっくんは鼻をすすり手の甲で鼻下をこすって言った。
「いや、はは。
音楽にのってる自分を想像しながら笑っちゃったから、スマホ見てるふりしてカモフラージュしてた」
「それ系のあるあるマジであるあるだよね。
俺なんかさ、見たくもない謎のエロ動画誤タッチしちゃってさ。偶然にも音量下げてたから良かったけどさ」
「いや、松山、それ故意にタッチしてるでしょ」
「いやいやしてねぇしっ。歩く・・・・とかじゃねぇしっ」
「ちゃんとそこ小さな声で言うんだ。
声でかいしって言おうとしたけど、肝心な所ちゃんと音量下げるのが松山テクニックだね」
「そういうテクニックは持ってるんだけどなぁー、それ以外のテクニックはないんだよなぁー、よっくん分けてくれぇい」
「いや、だからうるさいって」
2人はそんなやり取りを朝から繰り返す。多少の隠し事こそあれど、気の許せる間柄だった。
最初のコメントを投稿しよう!