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その直後、迎えに来た亡命先の星の住人たちによって、フリースと黒布兵たちは一人(一枚?)残らず拘束、連行されていった。因みにこの星の人たちはフェルトっぽかった。スプリンクラーが止まった後で本当によかったと思う。
王子はその後、通常通りの審議等を経て次期星王になるそうだ。その折には盛大なパーティが催されるから是非来星してほしいと言われたが、丁重にお断りしておいた。三千万光年も離れてるってんだから、気軽には行けないだろ。
あのとき、杉田は俺を囮にしてスプリンクラーを作動させに行ったのだった。自分のマフラーを王子とすり替えたのも英断だった。
「自分じゃ届かないからだけどな」
王子に頼んで、火気探知機にライターの火を近づけてもらったのらしい。なにしろ彼は二メートル近い“長身”だしな。片方の端を杉田が掴んでいれば余裕だったろう。
「よく話が通じたな」
確か王子は翻訳機を持っていなかったはずだった。杉田はいつも通りの仏頂面で、
「ジェスチャーってのは思ってたより使えるもんだ」
と言って頭を掻いた。
水浸しのゲーセンから出ると、俺はなんとなく空を見上げた。繁華街の明るい空には数えるほどしか星がなかったが、そのずっとずっと向こうには、俺が二百円で買った皇太子殿下がいる。そう考えたら、なんか悪くない災難だったな。
「…ぶえっくし!」
その後、俺は風邪をこじらせて、冬休みのほとんどを布団で過ごす羽目になったのだった。もう二度とマフラーなんか買うもんか。
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