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エピローグ
彼は夢を見ていた。
それはジャンルでいえば悪夢であり、現実であるような地獄だった。
周りの建物は崩壊し、地面には人だった肉塊が散乱し、死体の血で赤い川を作り、そして真っ白な肌をした人型の化け物が生きた人間を貪り食らう。
悲鳴と助けが飛び交う町、目を覆いたくなるその惨状だが、目を瞑りたくても何故か歩みを辞めず人間を食らっている化け物を避けながら、ただ真っすぐ……真っすぐ。
そして歩みが止まると目の前に頭を垂れた一人の少年がいる。
「誰?」と声を上げることもできず、眺めていると急に周りから音がなくなり、まるで時間が止まったように全てが停止し、目の前にいた少年が頭を上げると、顔が影のように暗く、右目の位置には炎のような青い光が揺らめいていた。
そして彼は自分に向けて手を差し伸べて。
「僕の事を……忘れ…ないで」
女性に近い声でそう唱えると、目の前が徐々に光に溢れ始める。
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