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「別れて下さい。慎吾と別れて下さい!」
マンションの部屋の前で私を待ち伏せていた
慎吾の今の恋人が、私に向かって叫んでいた。
「慎吾は? 夫は何て言ってるの?」
初めてじゃないだけに、私は落ち着いて彼女に問う。
「あ、慎吾は…」
「そう、別れないって言ってるんでしょ?」
「でも…」
「夫に捨てられたく無いなら、すぐに帰りなさい!」
「……」
私が一喝すると、彼女は泣きながら帰って行った。
これで何度目だろう?
男よりも、女のほうがやはりたちが悪い。
身体を重ねていく内に、夫を自分のモノだけに
してしまいたいという欲望が生まれるようだ。
「ただいま!」
「おかえり。彼女、帰ったかい?」
「帰ったわよ、泣いてたけど…良いの?」
「ああ、面倒かけたね。彼女とは、別れるよ。潮時だな」
こんな夫婦生活を始めて10年…
たまに、これで良いのか?と自分自身に問いたくなる。
【Episode3百合子★END】
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