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まーくん
彼と別れ、自宅に戻ると母に「ねえそこでまーくんに会ったよ」と報告した。
すると母親は怪訝な顔をして「まーくんなんて来ていない」と言うのだ。
そもそもKさんの家を尋ねてくる用事なんてない筈だと。
母親はそこからKさんを質問責めにしたので、色々説明したが今となっては全てが薄らぼんやりしてて何を話したかもよく覚えていない。
連絡のいった祖父がまーくんを呼び出し詰問したが、カンカンに怒った祖父を前にひたすら恐縮するのみで、誓ってKさん宅には行っていないと言う。
今度はKさんが思い違いをしてるんじゃないかと家族会議になったが、
年の割にしっかりしていたKさんが「まーくんは赤と緑の長袖のニット、バイクに乗っていた」とハッキリ証言するものだから、みんな首をひねっていた。
「でも変なんですよね、よくよく考えると。真夏に赤と緑のボーダーのニットって。しかもまーくんは大型二輪の免許なんて持ってなかったそうなんです。」
Kさんが、知らないまーくんを見てから数ヶ月後、まーくんは事故で亡くなったそうだ。
Kさんはあれほど親しくしていたのに、何故かお葬式には行った記憶はないという。
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