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私は引き寄せられるように、本棚の高い位置にある本に目を留めた。
部屋に用意されていた脚立をのぼり、端にある本に手を伸ばす。
それは他と比べると、若干の厚みがあり、脳裏には国語辞典がイメージとして浮かんでいた。
それを掴み、引き抜こうとしたその時──脚立がぐらっとバランスを崩し、私は仰向けの姿勢で倒れ、宙で開いた本に手を伸ばしたまま──
びくん。と跳び起きた。
気づけば自室のベッドの上。
漫画のように右手を伸ばしたまま、目を覚ましていました。
(今のは夢……?)
結論から言えばそうなのでしょう。
しかしあれは、現実と思えるほどリアルな夢でした。
踏みしめた床の質感、目の前に広がった部屋の光景、話かけてくれた男性の声も、存在感も、脚立を掴んだ冷たさ、本を掴んだ現実感。全てが夢だったとは思えない。
そして脚立が倒れた瞬間の──手に掴んでいたあの本が一瞬だけめくれた、あのページには、一体何が書かれていたのか。
気になって仕方がない日々が続いたが、その日以降、あの部屋にたどり着けることはありません。しかし今になって思えば、あの部屋のように、真理の書の内容は、ただの"白紙"だったのかも、とも考えます。
何も書かれていないこと、つまり"無"こそ"真理"だと記されていたのかも。
不思議な経験をした"真理"の部屋。
いつの日かまた訪れることができた時は、私の答えが"真理"だったのか、もう一度確かめたいと、切に願う。
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