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授業が始まってすぐに
「かったるいな」
と言うと、拓海に怒られた。
「いちいちしゃべらないでくださいよ。俺が独り言言ってるみたいで恥ずかしいじゃないですか」
ならいちいち反応しなきゃいいだけだろ。馬鹿なのか。
「ただ単に去年やった授業なんてかったるいに決まってるだろ」
「はあ」
拓海はため息をつく。本当は新しい授業でもかったるいけど、そこは黙っとく。
「桐生」
「な、何?」
1限の授業が終わったら拓海に話しかけてきた男がいた。俺の知らないやつだ。まあ1年だろう。と言っても俺だって2年の全員知っているわけじゃない。同じ学科で関わり合いのある奴ぐらいしか話したこともない。
「昨日4年の先輩と一緒にいなかった?」
「関係ないだろ」
拓海はあまり話したくないようだ。久実子のことからかわれるのが嫌なのだろう。
確かに俺も年上だからって色々言われたっけ。
でも、それぐらい気にしないで堂々としてりゃいいのにと思う。
「でも、あの人前に別の男と一緒にいるの見たけど。遊ばれてるんじゃないの?」
それは俺のことだろうか。しかし嫌味な奴だな。俺だったらそんな奴とは速攻縁を切る。
「うるさい」
「何だよ。人がせっかく忠告してやってんのに」
その男は離れていった。
「なんだあれ? あんなのが友達?」
「違うよ。どうせ彼女いないからってうらやましいだけだろ」
拓海は吐き捨てるように言った。俺は苦笑する。
「そういう奴いるよな。無視してりゃいいよ。久実子がお前のこと選んだんだし」
「慎平さんにそう言われると、言葉の重みが違うんだけど」
「うるせえ」
ちょっとは見直したと思ったらこれだ。やっぱりなんかむかつく。しかもいつの間にかタメ口に戻ってる。
ただ拓海が授業を受け、知り合いと話すだけのつまらない日常。
俺はだんだん退屈になってきた。俺が欠伸をすると、
「幽霊でも眠いんだ」
と言われた。確かに昨日は拓海と一緒にいつの間にか眠っていた。
「幽霊かどうかわかんないだろ」
「え? じゃあ他に何か意味が?」
ただ単に自分が死んだなんて認めたくなかった。
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