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「そういえば慎平さんって何学科なんですか?」
いきなり敬語になる基準が俺にはわからない。
「ビジネスマネジメント」
「俺はグローバル科ですけど」
学科がちがくても共通授業はあまり変わらない。別に拓海の学科なんかに興味はなかった。
正確にはグローバルコミュニケーション科だ。
かみそうになる学部の名前を誰も正確に口にしない。
時流に乗ればいいと考えている無能な経営者がつけたくだらない名称だろう。自分が通っているからこそそう思う。
そもそも俺は元々近くの広大に行きたかったのだ。
落ちたのは自分の責任だが、三流大学にやる気が出るわけもなく、だらだらと通っていたところに久実子に声をかけられた。
高校の時もてなかったわけじゃないが、付き合った女とはそこまでいかなかった。
初めてやった女だから未練があるのか。
俺が物思いにふけっていると、拓海は「ビジマに知り合いいないんですか?」と聞いてくる。
「俺の知り合いに会ってどうするんだ?」
「えーと、その」
拓海が言うには、俺のことを聞いてみたらということだった。聞いてどうするんだ?
聞いたところで、くだらない理由で死んだ馬鹿の話を面白半分でするだけだろう。
大した付き合いがある奴もいないし、どうせ俺が死んでも何も感じてないに決まってる。それを思い知るのが嫌だった。それに、聞いてしまったら、いよいよもって俺が死んだことがはっきりしてしまう。
俺はただ怖かったのだ。
「聞かなくていいよ」
拓海は少し迷って、
「すみません。出すぎたまねを」
と言う。
気を遣われるのもなんか気に入らない。
「お前はどうせ、普通に久実子だけじゃなく、これからいくらだって楽しめるだろ」
拓海は返答に困ってた。
俺は自分が困らせてるのがわかってて、気付かない振りをした。
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