20人が本棚に入れています
本棚に追加
全部の授業が終わった後、
「今日は久実子と会わないのか?」
と聞いてみると、「約束してないので」と言う。
「もしかして会いたかったですか?」
「何で俺に聞くんだよ。別に会いたくねえよ」
ただ単に自分の彼女なら毎日会いたいものなんじゃないかと思っただけだ。
拓海は淡白なのか。ただ単に俺に遠慮してるのか。判断がつかない。
最近はちょっとマンネリ化してたけど、付き合った当初は毎日、毎時間でも会いたかった。拓海は違うのかね。俺にはわからない。
そもそも久実子の方は? 本当に俺のほかに好きな人ができて、それが拓海なら、もっと会いたいはずだ。よくわからない。
それとも俺がおかしいのか? だから久実子に振られた?
結局拓海は普通に家に帰った。
「寄り道もしないの? 真面目なやつ」
「今日はバイト休みなんで」
拓海は授業も真面目に受けていて、よくやるなと正直思う。
俺なんてただ受けてるだけ。ほとんど聞いてない。授業中もスマホいじってるか漫画読んでるか寝てるかだ。
代返頼む奴もいないし、仕方なく席についてるだけだった。レポートは人の写したり、本を適当にアレンジしたり、いい加減だ。
成績は低いが卒業できりゃいいと考えていた。所詮大学なんて就職のための資格でしかない。
もしかして、それが久実子が拓海に乗り換えた原因だろうか。
そんなことを考えていると、突然拓海が言い出した。
「聞いてみましょうか?」
「へ?」
「久実子さんが慎平さんより俺を好きになった理由」
「ふざけんな」
俺が考えていたことが聞こえたのか? マジでやめてほしい。
「嫌味とかじゃなくて、慎平さんの未練がもしかしたらそこにあるんじゃないかって」
「うるせえな」
聞きたくないんだよ。そんなこと。
「じゃあ、俺の中にずっといる気ですか? そっちはそれでいいかもしれませんが、いい加減迷惑なんですよ。授業にも集中できないし」
俺だって好きでお前の中にいるわけじゃないと、言い返そうとしたが、やめた。
「出てきゃいいんだろ。出てきゃ」
「そういう意味じゃなくて」
最初のコメントを投稿しよう!