20人が本棚に入れています
本棚に追加
/28ページ
一体どういうことなのか、冷静に考えろ。
俺は必死でここ最近のことを思い出すことにした。
２週間前の話。
付き合っていた彼女、久実子に別れ話を持ち出された。
「慎ちゃん。ごめん。他に好きな人ができたの」
何それと思った。ふざけんなとも。
「何言ってんだよ」
「ごめん。ほんとごめんね」
久実子は泣きそうな顔をしていた。泣きたいのはこっちだっての。
「誰？ どんな奴？」
「言えない」
あっそと思った。
「その人に迷惑かかるといけないから」
じゃあ俺になら迷惑かけてもいいのかよ。
そう思うと、一気に気持ちが冷めていくのを感じた。
「もういいよ」
「慎ちゃん」
もう久実子の顔なんて見たくない。
久実子はまだ何か言いたげだったが、無視をして別れた。
久実子と顔を合わせるのが嫌で、大学には行きたくなかった。もし別の男と一緒にいるところを見かけたら？ そう思うと足が向かない。
しばらく腑抜けて大学を休んでいた。
だけど、いつまでもそうしているわけにもいかない。親は行けとうるさいし、暇すぎて吐き気がする。そんな時に考えるのはたいていろくな事じゃない。
久実子との思い出なんて今は考えたくもないのに。
俺はむしゃくしゃして、いらいらして、そして、バイクに乗ってすっ飛ばしたんだっけ。
最初のコメントを投稿しよう！