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カフェ、カラオケ、レストラン。久実子の行きたいとこ全部付き合った。結局久実子が払うときかないから、割り勘だったけど。ショッピングモールで服も見た。
「似合うよ」
とか言ってみる。
久実子は何でも似合うけど。
「もう」
と言ってバシバシたたく。
ラブホに入ると、「今日は本当にどうかしたの?」と聞かれた。
やっぱり不自然だっただろうか。
「別に」
と言ってはみるものの、久実子はまじまじと俺の方を見てくる。
「色々あって落ち込んでたけど、久実子さんの顔を見たらふっとんだんで」
これは嘘じゃない。
「そっか。良かった」
笑顔になる。
「なんか別れるつもりなのかと思っちゃった」
俺は一瞬びくっとする。鋭い。やっぱり女は勘がいい。
「そんなことあるわけないじゃん」
「ずっと不安だったの。拓海君、私に無理して付き合ってくれたんじゃないかなって」
おい、拓海。不安にさせてるぞ。
「久実子さん」
俺が拓海の代わりに言ってやった。
「好きですよ」
「ありがとう」
俺が勝手に言って良かったのだろうか。拓海はもしかしたら……。
でも、俺にはそう言うしかなくて。
いつもより時間をかけて、ゆっくり前戯をした。久実子の肌に触れながら、自分は何をやってるんだという気になった。
俺は本当に久実子と別れたくなかったのか?
面倒くさくなってなかったか?
マンネリ化して、好きだとかちゃんと考えてなかった気がする。
拓海のことを馬鹿にできない。
何故かわからないけど、泣けてきた。
久実子に見られないように必死だった。
「拓海君」
「久実子さん」
俺は急に、この場から逃げ出したくなった。
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