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すると、体が急に目をつぶり、何も見えなくなった。俺は目を開けようとするが、なかなか開かない。だが、しばらくして急に目が開いた。
そして、なんと手も足も動いた。一体どういうことだ? さっきのは夢だったのか。
俺は確かめようと思ってのそのそと起きる。
久実子の家だとすぐにわかった。何度も来たことがある。
やっぱりさっきのままかと思って落胆する。念のため洗面所で鏡を確認したが、自分の顔じゃなかった。
とにかくこのよくわからない男に乗り移っていることは確からしい。夢かどうかもわからないが、とりあえずそういうものとして考えるしかない。
やっぱり事故のせいで幽霊になり、取りついたとしか思えない。しかし何でこの男なんだ。これじゃあまるで久実子に未練があると言っているようなものじゃないか。いや、実際あるはあるけど。
そういえば自分の部屋のエロ本とDVDを処分してなかった。しまったと思う。
さすがにこいつの体のまま家に行ったら家族に怪しまれるよな。
くだらないことでもんもんとしていると、
「あれ、俺いつの間に起きたんだっけ?」という声が聞こえた。
この体の主が気付いたのだろうか。そういえばさっき拓海君と呼ばれていた。しかし、どうして俺がちゃんでこいつが君なんだとどうでもいいことを思う。
こいつが起きたとたん体を動かすことができなくなった。やっぱり寝ている間だけ動かせるのか。
「久実子さん?」
寝室に戻ると久実子はまだ寝ているようだった。
「起こしちゃ悪いよな」
そいつはぶつぶつ言って、布団にもう一度入る。
そういえば今は何時なんだろう。
こいつは久実子の家に泊まってるのか? 俺だってたまにしか泊めてもらえなかったのに。
そもそも俺よりこいつがいい理由は何なんだよ。さっきちらっと見た感じじゃ、そんなイケメンってほどでもなかったし。俺の方が上だろ。男に興味ないから実際はよくわかんねえけど。
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