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まぶしい光が当たって俺は目を覚ます。ここはどこだ? と一瞬考え、自分の体が動かせないことに気づく。体は勝手に上半身を起こし、伸びをする。
ああ、そういえば変な男の中にいたんだった。結局夢じゃなかったのか。
そういえば久実子は? 寝ていたはずの場所にいない。先に起きたのだろうか。
「あ、拓海君起きた?」
と久実子がドアから顔を出す。寝起きのはずなのに、セミロングの髪はきちんと整えられていた。もしかしてだいぶ前に起きたのだろうか。
いや、そもそも久実子は乱れた姿というものをあまり見せてくれたことがない。シャワーを浴びるのもそれぞれで一緒に入らせてはくれなかった。
すっぴんの姿を見たのも数回ほど。すっぴんでも悪くないのに、毎日化粧をばっちりする。
久実子の姿を見かけたとたん、こいつは言った。
「久実子さん、俺帰ります」
ん? 今何時か知らないが、もう帰るのか?
「大丈夫? 道わかる?」
「二回目なのでさすがに覚えましたよ。俺、大学あるんで」
大学? もしかして同じ大学の奴か?
「別に1日ぐらいさぼっちゃえばいいのに」
「休めない授業なので、すみません」
まじめな奴だなと思う。俺なら絶対残ってもう一発……じゃなかった。食事ぐらい食べてくのに。
「また、学校で」
「連絡するね」
「はい」
久実子の家を出て歩き出した。俺はこいつの中にいるのだし、そのまま一緒に行くしかない。久実子のことは名残惜しいが。ってもう俺の彼女でもないし、こいつとやっている姿なんか見たくないけど。
俺はいつもう一度声をかけようか迷っていた。昨日みたいなタイミングじゃ、気のせいだと終わらされてしまう。
そのまま大学行くつもりか? それともいったん家に帰るのか。今何時か見逃した。
歩いている途中に通勤や通学のやつとすれ違ったので、七時台ぐらいだろうと推測できる。ということは、9時に大学が始まるとして、やっぱりまだ早いから一度家に帰るのかもしれない。
仕方がない。家に戻った時がチャンスだ。
俺はそう思ってとりあえずこいつの行動するままに任せた。
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