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ピラムは続けた。
「行こう。クレスを止めないと。…あいつのことだから今のレピオスを見たら間違いなく逆上する。理性がなくなる前に止めないと。…もう手遅れかもしれないけどね」
「……どうやって止める?」
棒読みになっているのはむしろケイの方だった。
しゃべっていても、声にまるで生気が入っていかない。
「ケリュケイオンで宇宙の果てにでも飛ばすくらいしか思いつかないよ。ま、理性が飛んだあとだと一緒に飛んだ後で俺たちはただじゃすまないだろうけど。そうなったクレスは誰の手にも負えない。周りの人間すら手にかける」
「…友達でも?」
「………妻子でも」
唖然。ピラムの言葉にケイの頭が真っ白に染まる。
彼をここへ連れてきたのは自分だ。
アスクレピオスを兄弟と呼んだ彼なら絶対に助けてくれると確信していた。それは確かに間違いではなかったのかもしれない。ならばあとの責任は自分がとるべきだ。
しかし…本当にそれでいいのか? 逆上した彼を止めるために今度はケイが身を削って万事解決で…いい…のか?
「ピラム……。ケリュケイオン、貸してくれ」
「どうするの?」
「クレスを巻き込んだのは俺だ。……俺が、責任をとる」
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